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みなさん、お久しぶりです。
お久しぶりです、と言うのも憚れるくらい
久しぶりの登場で申し訳なく思ってます。
ここで私がなかなか書き込めなかった理由を書いても、それは詰まるところ言い訳にしかならないと思うので、あえて説明はいたしません。
ただ、一言いっておきたかったのでブログを更新します。
私は3月下旬まで小説を更新することが出来ません。
楽しみしてくださっている皆さん本当にごめんなさい。
でも、少し落ち着いたらホームページも一新しようと考えてます。
ですので、見捨てずに、温かい目でどうかゆきねこを見守ってくださっていただけると嬉しいです。
毎日アクセスカウンターに訪問者の数が表示されるのを見るたびに、申し訳なさの気持ちと、感謝の気持があふれて来ました。
ですので些細な恩返しですが、この場を借りて読みきりの短編小説を書かせていただきます。
もし良かったら活動再開までの暇つぶし程度になることができれば幸いです。
「待ってよ!」
自分でも驚くくらいの大きな声で私は叫んでいた。
その声に反応して、なおもドアに向かって歩いていく男の手首を無理やりにつかんだ。
「待ってって・・・・・・言っているでしょ・・・・・・」
流すまいと決めていたのに・・・・・・。涙なんて絶対に流さないと。
それでも頬を伝っていく一筋はリビングの明るすぎる白熱灯に照らされてかすかに反射した。
白を貴重とした部屋をより一層白く、そして明るくしてくれる代物である反面それまであった何かが欠けたような気がした。
でもその白さが今日に限って妙に感じる無機質さが私の心をツン、と刺激している。
「お前のためを思ってるんだって言ってるだろ。分かってくれよ・・・・・・」
まるで自分へ言い聞かせる呪文のように彼は繰り返した。
「そんなの・・・言い訳だわ!あなたはいっつもそう。肝心なことは、大事なことは、私に一言も無しで勝手に決めて、それで勝手に傷ついていく私を遠くからただ眺めるだけじゃない!」
私の涙を一度横目で見て、深くため息をついた。
「お前もいつもそうだよな。自分だけがまるで悲劇のヒロインのつもりか?」
そんなのじゃない。違う・・・・・・違うのに・・・・・・!
私は・・・・・・そんなつもりじゃ・・・・・・。
そう考えれば考えるほどに流れてくる涙。そんな風に言われて悲しくて、それでも涙を流してしまう自分が悔しくて。
ただただ流れっぱなしになっている涙を止めるすべも無く立ちすくんでいると、彼の手からハンカチが渡された。
「拭けよ。泣いてたんじゃ何も始まらないだろ」
ハンカチを出してくれる優しさを受け取りたい気持ちと、そんな彼の気持ちを受け取るわけにはいかないという自分の意地とのジレンマで私は動くことが出来なかった。
その葛藤の渦に一人入り込んで下を向いていると、いつの間にかあたたかい感触が頬をつたう。
はっとして上を向けば彼の手が私の顔まで伸びている。
そしてゆっくりと、丁寧にハンカチを上下させる。
優しさなんか・・・・・・見せないでよ。
・・・・・・なんで突き放すくせにまたそうやって引き戻すの。
中途半端な優しさだったら見せてくれないほうがいい。
私はあなたのなんなの?
どんな存在なの?
声にならない叫びを心の中で反芻させる。
まるで自分の声が自分自身を傷つけているかのように。
「涙、拭け」
差し出されたチェック柄のブランド物のハンカチは私が誕生日に彼に贈ったものだった。
「これ・・・・・・」
顔を上げると彼のきれいな横顔が見えた。
あぁ、こんな横顔も好きだったんだよね。
朝に弱い彼が起きて始めて見せる表情を私は知っている。
カレーライスを食べ始める前にスプーンを一回舐める仕草も、コーヒーには必ず砂糖を二杯きっちり入れることも、嘘をつこうとすると無意識に耳を触る癖も全部全部知っている。
私が彼のことを知っている分、彼も私のことを見ていてくれていると思っていた。
でも、それは間違い。
私が髪を切った時も、新しいピアスを買ったことも、寂しいときに無意識のうちに彼の名前を呼ぶ回数が増えることも、なにも見てなかった。
全部私だけ、私からだけの思いだったんだ。
「・・・・・・もう、一緒にいられないのかな。私たち」
「それしか、無いだろ。お互いが幸せになれる方法は」
嘘だ。そんなの。
右耳に触れている彼の手を見ていると、今までの思い出が頭の中を駆け巡った。
「いい加減大人になれよ」
「大人って何?ここで素直に別れを受け入れられるのが大人なの?涙を流さないでキレイにばいばいするのが大人なの?私、そんなのわかんないよ。大人になんかなれな――」
最後まで言い切る前に彼の柔らかな唇が覆った。
「止めてよ!」
私に思い切り押しのけられた彼は、フローリングに大きな音を立てて尻餅をついた。
お互いの間に重い沈黙が流れる。
週末に掃除したフローリングは嫌味なくらい白熱灯の光を反射していた。
「・・・・・・俺だって別れたくないよ」
「じゃあ、なんで――」
「俺は、お前が好きだよ。世界中の誰よりも」
「うん」
「それに俺は知ってる。お前が夢を叶えるために本気で頑張ってることも」
「うん」
「お前にはもっと輝ける場所がある」
彼の声は、いつの間にか震えていた。
「でも、その場所に行くには、俺と一緒にいちゃダメなんだ」
私も声が出なくて、黙ってうなずいた。
「パリ、行ってこいよ。全身全霊かけて夢に立ち向かってみろよ。夢だったんだろ、世界一のパティシエールになるのが。知らないとでも思ったのかよ。夜中までキッチンにこもって頑張ってるお前のこと・・・・・・」
そういうと、彼は俯いたまま嗚咽を殺すように泣いた。
私は何も言えずに、大粒の涙を流した。
「応援してるから。何処にいても応援してるから」
優しく私の肩を抱いた彼の声は今まででいちばん優しくて、暖かなものだった。
「パリで、修行して、死ぬほど修行して、日本に帰ってきたら、また、また私と付き合ってくれ、ます、か」
しゃくりをあげて思うように出ない声を振り絞って言った。
その問いに彼は痛いくらいの抱擁で答えてくれた。
「・・・・・・大好き」
今まで無機質にしか感じなかった白熱灯の明かりが、不思議と未来への希望の光に見えた。
まるであたたかい光が二人を包んでくれているように。
どうでしたか?
まだまだ文章力、表現力、発想力のなさを痛感してしまいます 笑。
もしよろしかったらぜひ感想をお聞かせください。
ではでは。